口から食べる幸せを守る(第3回)

口から食べる幸せを守る(第3回)

  2認知機能を高める食事介助

私たちの食行動は、食物を認知することから始まります。食物がどこにどのように位置しており、どんな方向から介助を受けているかなどを、視覚でわかるような配慮を行いましょう。ゼリーやペーストの場合はスプーンをしっかりと舌の中央にのせます。咀嚼が必要な場合は舌のやや手前に接地して、「口を閉じてください」と指示します。

 介助する際の手の用い方として、とかく介助者は自分の正面に食べ物をおいて、介助する手だけが患者さんの口元へいってしまいがちですが、それでは患者さんはその動作に目線が行き、頸部はその方向へ回旋しやすく、介助者を見上げてしまいます。その結果、頸部が伸展していれば、適切な介助がわかると思います。

 食べる環境として、患者さん自身が食べたいと思え、美味しいと知覚できる食物や嗜好を取り入れた食べ物を提供しましょう。また、美味しいと思える演出や盛り付けも大切なポイントです。味覚、嗅覚への働きかけと共に、その人の記憶(食生活史)に刻まれた食事を再現することも効果があります。嫌いなもの、苦手なもの、代わり映えしない食べ物、ボリュームが多く、味も薄い、見栄えが悪く、美味しくない食生活って食欲を低下させます。食欲が低下している方には殊更、気を遣ってあげたいものです。病院や施設では、集団給食による個人的嗜好についての配慮が難しい場合もありますが、嫌いなもの、苦手なもの、美味しくないものを無理強いしないようにしたいものです。人間が食するということは、自尊心を伴う高次な生活活動です。好きなものは食べられても、嫌いなものは決して食べられません。

    摂食嚥下障害を悪化させる誘因

  1. 加齢的-生理的変化による老化  2.複数の疾病罹患や合併症   3.高次脳機能障害や認知症  4.治療-薬剤の副作用(口腔内乾燥・味覚低下など)  5.廃用症候群(経管栄養の長期化や活動性の低下など)  6.口腔機能低下や汚染 7.低栄養やサルコペニア 8.不適切な評価    9.不適切な環境や不良姿勢   10.不適切な食事介助

     不適切な介助法

  ・顎が上がった状態、適度な前屈位での食事

  ・片手が下がって肩も下がった状態での不良姿勢での食事

  ・自分だけ見て相手の視覚に食べ物がない介助 

  ・食べ物が遠くに離れている環境での食事介助

  ・スプーンが鼻から上の角度で入って来る介助

  ・スプーンを中途半端に入れ、しっかり舌上にのせない介助

  ・暇らせてしますう介助

  ・一口入れたらじーっと見ているだけで手が止まってしまう介助

  ・ゼリーをクラッシュする

  ・粥を混ぜる

  ・難しいものを次次に入れる介助

                       (高橋)