痛みとうまく付き合うテクニック(第10回)

痛みとうまく付き合うテクニック(第10回)

私達が使う治療方法の一つに「神経ブロック療法」がありますこれは特定の神経を薬で一時的に遮断し、その先に痛みの信号が届かないようにする療法です。この神経ブロックを治療だけではなく診断の手段としても使っています。

 レントゲンやCT、MRIを駆使しても、痛みは画像には現れませんし、そうした画像に出た病変個所と痛みの位置が一致しない方もたくさんいます。そこで、特定の神経をブロックしてみて痛みが消えれば、その薬の到達範囲に痛みの場所があると判断できるわけです。

 神経ブロックを行い、毎回同じように痛みが減るのか、減らないのかを確かめていきます。神経ブロックがよく効く方は、それで悪循環が抑えられれば、たった1回のブロックで有効に痛みが減っていくことも珍しくありません。

 ですから、診断して治療するだけでなく、それが良い方向に向かっているかを評価することが非常に重要なのです。私達が時間をかけていろいろな質問をするのは、「着実に改善するにはどうすればよいか」を考えているからだとご理解ください。

 慢性痛に有効な新薬が登場

 痛みの治療で使用す薬も、最近はさまざまなものが登場しています。特に、神経のダメージが原因の神経障害性疼痛に作用する薬として、2、3種類の新薬が出ていますが、とても有効性が高いと言われています。このような薬が体のどこに働き、どのようにして痛みを抑えるのかを説明しましょう。

 かつて、鎮痛剤としてよく使われた薬に「ボルタレン」や「ロキソニン」などがあります。これらは消炎鎮痛剤と呼ばれ、どのように炎症を抑えて痛みを鎮める作用がありますが、それ以外に原因がある痛みには、必ず効果的とは言えません。

 しかし、ここ数年は神経障害性疼痛にダイレクトに効く薬が出てきました。下行性疼痛抑制系に作用して痛みを感じにくくする薬、さらには脳の機能に作用し、頭の方で痛みを感じにくくする薬が挙げられます。(高橋)