口から食べられること自体が呼び水となって、意識の回復がみられたり、食べる力が改善されたりすることもしばしばです。目もよく開かない状態の患者さんでも、口をきれいにして、姿勢を整えて、ゼリーを口元に持っていくと、唇の感覚と匂いに反応してちゃんと飲み込んでくれますし、その行為に反応して目を開けられるようになります。食べる行為によって意識がしっかりして、自分で食べようと力をふりしぼって、口に運べるようになる人も少なくありません。
肺炎で入院したとしても、入院して2日以内に食べるリハビリテーションを開始した群と3日以上禁食を続けた群では、2日以内に食事を開始した群の方が、退院畤の経口摂取移行率が高まって、在院日数も短縮するという報告があります。また、入院後すぐに積極的に経口摂取を始めた場合と、消極的な場合を比較すると、消極的な場合は、食べる機能が低下し、死亡率が高まるという報告もあります。今や、「誤嚥性肺炎は食べながら治す!」時代です。
正しい食事環境と食事介助をしよう!
口から食べる幸せをサポートしていくためには、適切な食事介助技術が必要です。
1、安全で集中力を高める物理的環境 食べるリハビリや継続を安全で効果的に実施していくためには、食事に集中できる環境設定が必須です。注意が散漫となるテレビの画像や音、騒然とした話し声、あわただしい人の出入りなどは、摂食嚥下障害者にとって適切な食環境とは言い難く、むしろ食事量が減ったり、注意散漫となったりして誤嚥のリスクが高くなります。
ベッド上での食事開始において、摂取角度が高すぎてしまったり(普段は車椅子に座っているから、食べはじめも車いすで大丈夫と誤った解釈をしていること)、頸部前屈位のポジションが不足だったりの場合も、視線が壁や天井に向きがちとなり、飲食物への視線情報が狭小化されやすくなり、安全に食べることができません。(高橋)
