口から食べる幸せを守る(第1回)

口から食べる幸せを守る(第1回)

  命に力を注ぐ食の支援

  口から食べることは、単なる栄養ではなく、生命を育む根幹であり、人間が幸せに生きるための基本的な権利です。しかし、超高齢化の加速により、現況の医療や福祉の現場では、口から食べたい願いが叶わず、点滴や胃瘻栄養のみという方々が大勢いらっしゃいます。病気や歳をとって、食べることもままならず、チューブのみで栄養を与えられる生活を余儀なくさせられたら、どうでしょう?どれほど辛く苦しいでしょうか、生かされているにすぎないとさえ感じるかもしれません。もしも大事な家族がそうなったらどんなに悲しいでしょう。なんとか美味しいものを、少しでも食べさせてあげたいと切に思いませんか。

  食べられないという苦痛の極みを経て、初めて食べ物が喉を通った時に、「ああ、生きていたんだ」そう実感すると患者さんはおっしゃいます。患者さんは、病気による身体的、精神的、社会的な苦しみにおかれています。そのようななかで、食べられるようになった喜びは、生きていく光明を見出だしふたたび元気になろうという力を取り戻していく大きな糧となります。

  口から食べられない人を限りなくゼロに!「食べることへの支援」は病気に苦しむ方々とその家族に、生きる喜びと希望を与え、命に力を注ぎます。

    病気になっても早期に経口摂取を開始し、食べ続けることが大事

 予防していても病気になることはあります。そのため、病気になった後、いかに早期に食べるリハビリをするかが非常に重要です。口、舌、顎などを動かさないと、口腔周囲の筋肉が萎縮し、関節も拘縮していくからです。筋肉の衰えるスピードは速く、1週間使わないだけで15%~20%も筋力は低下し、食べて飲み込む力が失われてしまいます。

  一般的には、要介護者は、誤嚥性肺炎を引き起こすのではないか、誤嚥性肺炎が悪化するのではないかという懸念から、経口摂取を禁止しがちです。しかし、容易に静脈栄養や経管栄養だけに頼ってしまうと、その間にも食べる機能は落ちていきます。いくら経管栄養を注入しても、心身の機能は衰え、生命力が消耗されてしまいます。そして、辛い時間を過ごすことになります。しかし、早く医療者の食べる支援の介入があれば、より早い回復へとつなげることができます。(高橋)