痛みとうまく付き合うテクニック(第7回)

痛みとうまく付き合うテクニック(第7回)

このように痛みが長く続くと、他の神経にも「感作」と呼ばれる影響が出てきます。これは痛みの神経が、本来それとは全く別の神経である触覚の神経や圧覚のための神経と混線し、ついには混線したまま繋がってしまう状態です。すると、触ったという圧覚の情報も、痛みとして感じられてしまいます。

さらにもう一つ、痛みにかかわる神経系で重要なものが「自律神経」です。暑い時には汗が流れますが、これは自分が「暑いから汗を出そう」と意識しているわけではなく、自動的に出てきます。このような働きを担っているのが自律神経です。なかでも体を緊張や攻撃などの方向に向かわせるものを交感神経といって、痛みを強める性格を持っています。

いきなりつねられると、体が身震いして寒気を感じることがありますが、このように働いているのが交感神経です。

痛みによって刺激された交感神経は血管を収縮させるため、そこに「発痛物質」がたまり、さらに痛みを強くします。発痛物質がどんどんたまっていくと、痛みもどんどん強くなります。ですから、交感神経が過度に働かないよう、なるべく早く遮断する必要があります。急性期も長引くと、さまざまなな痛みの増幅回路が働きだし、痛みが治りにくくなるのです。

急性期の痛みが生まれる仕組みは、きわめてシンプルですが慢性期は神経系の配線がダメージを受けている状態です。本来、痛みは体に悪いものがあることを知らせるものですが、これでは警告信号の意味はなくなり、神経自体のダメージによる機能異常になってしまいます。

また、痛みに苦しんでいる人にとっては、気持ちの問題も見過ごしにはできません。例えば、帯状疱疹は体幹部にできることがありますが、その場合、服を着ていれば他人の目に触れることはありません。そのような患者さんが痛みを我慢して、歩いたり、何か動作をしたりしても、他の人からは痛そうに見えないのです。

それで、周りの人はつい「もう治ったんですね」と言ってしまいます。すると、患者さんは「まだ痛いのに、誰も自分を理解してくれない」という気持ちが強くなり、独りで苦しみ、そのような気持ち自体がまた痛みを強くしてしまうわけです。これが心因性疼痛です。(高橋)