帝京大学の公開講座に行きました(第9回)

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薬をうまく使って

治療薬には非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIⅮs)、副腎皮質ホルモン(ステロイド薬)、抗リュウマチ薬、生物学的製剤など4種類あります。

非ステロイド薬。これは変形性関節症でもよく使う、いわゆる痛み止めです。「消炎鎮痛薬」と書いてあるから、炎症を止めてくれるのだろうと思いますが、これは言葉のあやで、全く炎症を止めません。例えば湿布には消炎鎮痛薬が入っていますし、飲み薬もあります。飲み薬は病気を元から良くしてはくれませんが、痛みは取ってくれます。痛みを取ってくれれば動けるようになりますから、これはとても重要です。ただし、この薬は、発疹が出たり、胃や腎臓が悪くなったりする副作用があるのでうまく使うことが重要です。

ステロイド。ステロイドホルモンが発見されたのは戦後すぐ、1950年くらいにアメリカのメイヨー・クリニックの人達が牛の副腎から精製しました。アメリカ人は肉を頻繁に食べるので、何万頭も解体した牛の中から、余った副腎をもらってきてすり潰して抽出したところ、副腎皮質ステロイドが発見されました。1950年代には、ホルモンが足りないとリュウマチになるのではないかと思われていたので、それをリュウマチの患者さんに投与していたら、劇的によくなりました。これは大ニュースでした。小さな講演会で発表したところ、講演会にいたニューヨークタイムズの記者が1面でスクープし、何と次の年にはノーベル賞を受賞しました。

しかし、副腎皮質ステロイドだけを使っても、リュウマチは5年後にはあまり変わらなかったことが分かると、これは比較的副作用が多い薬ですから、すごく嫌われるようになり、ステロイドバッシングになったのです。結局、ステロイドはどうなるかというと、今も使われています。実はステロイドはすごく良く効きます。そして、他の薬がなかなか効かない部分を埋めることができるのです。

使いようによっては良い治療薬になりますので、これをうまく使える先生を見つけて、絶対にイヤと言わないようにしましょう。短期的にうまく使うと楽になります。そして、うまく使ったほうが骨の壊れが少ないという研究もたくさん出ています。ただし、延々と使う事はあまり良くありません。もちろん副作用もあります。

抗リュウマチ薬はリュウマチ治療薬の中心で、様々なものがあります。実は中世から金(ゴールド)を注射するとリュウマチが良くなることは経験的に知られていて、この注射は今も生き残っています。それからメトトレキサート。この薬は現在リュウマチ薬の中心です。もともとは抗がん剤でとても強い薬ですが、リュウマチは滑膜という細胞が無軌道に増える、まるでがんのような性質を持っています。それをやっつけるにはこれくらい強い薬が必要なのです。

これは大変良く効いて、2~3割の人はこれを使うだけでとても良くなります。ほぼ7割の人にはある程度の効果がありますが、パーフェクトではない方も半分以上というお薬で、リュウマチが進行しないようにしてくれます。副作用としては、感染症が起きたり、発疹が出たりします。これは菌に弱くなることがあるためで、気管支炎を起こしやすくなったり、特に女性は膀胱炎を起こしやすくなったりすることもあります。

しかし、これはとにかくいいお薬です。もともとは抗がん剤だなどと言われると恐ろしげで、何だか嫌かもしれませんがリュウマチの方、みなさんに使います。週1回だけ使います。毎日飲むと副作用が出ますが、週1回なら出ません。おまけにリュウマチも良くなって寿命も延びますし、他の薬と一緒に使うと、そのお薬がさらに際立って良くなります。ただ、副作用も多いので、飲む日を決めること、熱が出たり風邪のような症状が出たら注意、口の中が荒れたら白血球が減少したサインという事に注意しましょう。(高橋)