帝京大学の公開講座に行きました(第10回)

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生物学的製剤。メトトレキサーとやNSAIⅮsは、とても小さなケミカル、化合物ですから、工業プラントでつくります。副腎皮質ステロイドもそうで、分子量が小さい。それに対して生物学的製剤はタンパクです。どのようにして作るかというと、細胞に遺伝子を入れて細胞に作ってもらい、細胞をかき集めてタンパクを精製し、製剤にします。要するに細胞が作っているから生物学的製剤なのですが、これはとても良く効きます。関節リュウマチの病気の原因は炎症を促進させる炎症性サイトカインがたくさん増えてしまうことが原因ですが、生物学的製剤はこれを中和します。

これを注射すると、7割以上の人に対してものすごく効きます。メトトレキサートと一緒に使うことが多いのですが、これはタンパクなので、飲み薬だと、胃でペプシンと胃酸で分解されてしまうため、そのまま皮膚か静脈に注射しなければいけません。これが大変なのですが、基本的にはとても良い薬です。

生物学的製剤はいくつもありますが、どれも有効性はとても優れています。「こんなにたくさんあるけれど、どれを最初に使えばいいのか?」というお話になると、基本的にはどれでもいいです。ただ、価格がちょっと高いことが難点です。細胞から作ってもらうので、クオリティコントロール、要するに製剤の品質を保つことが難しいのです。

また、とてもいい薬ではありますが、副作用も起こります。感染症が非常に多く、肺炎、腎盂腎炎のように菌が入って入院せざるを得ないような方が年間で1%あり、結構大変です。他にも様々な副作用がありますから、これも何か具合が悪くなったらすぐ来てくださいと言いつつ使うことになります。

リュウマチの治療は、最初は痛み止め、それから抗リュウマチ薬、ステロイドと言っていました。しかし、最近は生物学的製剤も出てきましたし、リュウマチは発症早期に関節障害を起こすことも分かってきました。そこで、なるべく早期に診断し、最初から積極的に治療してもらおう、怖い薬だけれども、副作用をわかった上でしっかり使ってもらおうという事になってきました。

現在、我々の目標は、腫れている関節は1個以下、痛い関節も1個以下というものです。このような状況になれば、一応は臨床的に寛解(病気が落ち着いている状態)ということになるので、これを目標にしています。

あとは手術です。関節が壊れてうまく行かないと、手術をいくつか行って人工関節に替えることもありますが、最近はかなり減ってきています。これはリュウマチの薬物療法が良くなっているからです。

また、運動療法、理学療法、作業療法、装具療法などのリハビリテーションも行います。関節の機能が落ちても、それを何とか補ってうまくやる方法については、先人の知恵がいくつもあります。

画家のルノアールは晩年に20年はリュウマチの痛みのため筆を持つことが出来なかったといいます。関節リュウマチの頻度は0,6%位で現在日本の推定患者数は約70万人、男女比は1:3~4で女性の方が多く30~60歳位の発症が多いです。

良性疾患とされますが、日本の2004年の調査で平均寿命は男70歳、女69,2歳で国民の平均寿命をかなり下回っています。新しい薬は発見されていますが、なぜ発症するか残念ながら分かっていません。遺伝的要因か何らか原因で口の中と肺と腸が大事という事が分かってきました。(高橋)