HIV感染者の口腔症状と歯科治療について
サーベイランスのためのHIV感染症/AIⅮS診断基準(厚生省エイズ動向委員会)
A、真菌症1、カンジダ症2、クリプトコッカス症3、コクシジオイデス症4、ヒストプラズマ症5、ニューモシスチス肺炎B、原虫症6、トキソプラズマ脳症(生後1か月以降)7、クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)8、イソスポラ症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)Ⅽ、細菌感染症9、化膿性細菌感染症10、サルモネラ菌血症11、活動結核(肺結核又は肺外結核)12、非定型抗酸菌症Ⅾ、ウィルス感染症13、サイトメガウィルス感染症14、単純ヘルぺスウィルス感染症15、進行性多巣性白質脳症E、腫瘍16、カボシ肉腫17、原発性脳リンパ腫18、非ホジキンリンパ腫(ⅬSG分類による⑴大細胞型、免疫芽球型⑵Burkitt型)19、浸潤性子宮頸がんF、その他20、反復びょう姓肺炎21、リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成;ⅬIP/PⅬHcomplex13歳未満22、HIV脳症(痴呆又は亜急性脳炎)23、HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)
口腔カンジダ症は真菌の一種、とくにⅭandidaAlbicansによっておこされる疾病の総称で、以前はモニリア症moniliasisと呼ばれたこともあります。口腔粘膜の急性偽膜性カンジダ症は、鵞口瘡thrushと呼ばれています。免疫低下や口腔ケア不良など、日和見感染であることが多く、口腔の不快感・味覚障害・口腔痛が起きることもあります。
ⅭandidaAlbicansについて成人の正常な口腔内にもかなり多く、成人の1/3~1/2に分離培養されます。そのため細菌検査でこの真菌が分離培養されたからといっても病原的意味を与えることは望ましくありません。妊婦や1歳までの乳幼児を抱えている母親の口腔内からは、この真菌は正常の口腔内よりも多いといわれています。
主な内用抗真菌薬は、アムホリシンB、フルコナゾール(深在性真菌症)ミコナゾール(口腔・食道カンジダ症)イトラコナゾール、フルシトシン((深在性真菌症・皮膚真菌症)グリセオフルビン(皮膚糸状菌による白癬)ナイスタチン(消化管カンジダ症)テルビナフイン(皮膚真菌症)などがあります。イトラコナゾールはシロップ剤なので、できるだけ口の中に長く十分に含んだあとに嚥下させることにより、効果を上げることができます。
相互作用について、ミコナゾールとハルシオンの併用により、ハルシオンの血中濃度が3倍から7倍になったという報告があります。イトリゾールとリポバス(抗高脂血症薬)の併用で横紋筋融解症発現します。ティーエスワン(抗がん剤)とフルシトシンとの併用により、重大な血液障害が出ます。(高橋)