痛みとうまく付き合うテクニック(第9回)

痛みとうまく付き合うテクニック(第9回)

治療のゴールの一致には患者さんの治療の参加が不可欠

もう一つポイントとなるのは、治療のゴールに関する意識の問題です。多くの場合、患者さんが思い描く治療のゴールには、どこも痛くない、健康そのものの自分があります。しかし、60代、70代の方が20代の活気あふれる自分に戻りたいと思っても、現実的には難しいと言わざるを得ません。

 このように、患者さんが思い描くゴールと、現在の医療の力で導き出せるゴールが食い違っている場合は、すり合わせが必要になります。残念ながら、医療側のゴールのレベルをいきなり大きく引き上げることは難しいので、「今はこういう治療法があります」「こういう考え方があります」「こういう運動法があります」というような情報提供を、積極的に行っていくようにしています。

 つまり、いろいろな形で患者さん自身に参加していただくことを通じて、お互いのすり合わせを行っていく。これが大切なポイントとなります。そこで、私たちは治療目標として、痛みを減らすだけではなく、患者さん一人ひとりの具体的な状況把握に力を入れています。例えば、さまざまな形で「どうなっていますか?」と問うわけです。「お買い物に行っていますか?」「睡眠は取れていますか?」などと、痛みのことだけではなく、多面的に聞きます。

 すると、治療効果が上がっている方は、「近所までしか行けなかったのに、旅行に行くことができました」とか、「お祭りがあったので出かけてみました」などと答えてくれます。こうした話を通じて、患者さんの活動量が上がってきているかどうかを把握し、その結果に合わせて治療計画を立てていくわけです。(高橋)