肺がん疾患啓発キャンペーンの市民公開に行きました(第16回)

肺がん疾患啓発キャンペーンの市民公開に行きました(第16回)

体の痛みや心のつらさを我慢しないで!

苦痛を和らげてくれる専門家がいます。

体の痛みに対するケア:がんの痛みには、治療に伴う急性痛とがんの進行に伴って現れる慢性痛があります。これらの痛みに対して、WHO(世界保健機構)は、1986年に「がん疼痛治療指針」を発表し、痛みの段階に応じた治療法を示しています。がんの痛みの治療を専門とする医師、看護師、薬剤師も増えていますので、いつでも必要なときに遠慮せずに相談したいものです。まずは担当医や病棟看護師に痛みの強さや性質をできるだけ具体的に伝えてみましょう。

緩和ケアチーム:一般病棟の入院患者に対して担当医や病棟看護師と協力しながらチームで痛みの治療やケアを行います。厚生労働省が定めた基本的な構成員は身体的苦痛、精神的苦痛に対する医師各1人ずつ、看護師の合計3人です。

緩和ケア病棟(ホスピス):いわゆる終末期の患者さんを対象にした病棟で、体の苦痛だけでなく心の苦痛だけでなく心のつらさや苦しさも和らげることを重要な支援として位置づけられています。ときにはボランティアもチームに加わり、患者さんと家族をサポートします。

心のつらさに対するケア:「がんの疑いがある」と言われた時点から患者さんは動揺したり、不安になったり、落ち込んだり、怒りがこみあげてきたりと、さまざまな心の葛藤に襲われます。多くの患者さんは家族や友人、医師や看護師などにつらい気持ちを打ち明けることで徐々に落ちつきを取り戻しますが、2~3割の患者さんは心の専門家による治療が必要になると言われています。不安や落ち込みで眠れない日が続くようなら心の専門家に相談してみましょう。

精神腫瘍医:がん患者さんとその家族の精神的症状の治療を専門とする精神科医または心療内科医のことです。厚生労働省や日本サイコオンコロジー学会を中心に精神腫瘍医の育成や研修が行われています。

リエゾンナース:患者さんの心のケアを直接行ったり、病棟看護師に心のケアの助言をしたりする精神看護の専門ナースです。日本看護協会が認定する精神看護専門看護師もリエゾンナースとして活動しています。

臨床心理士:臨床心理学に基づく知識や技術を使って心の問題にアプローチする専門家のことです。がん専門病院を中心に精神腫瘍医やリエゾンナースとともに患者さんや家族の心のケアを行っています。

経済的に困ったときの対策は?がんの治療費について困ったときは一人で抱え込まず、かかっている病院のソーシャルワーカー、または近くのがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターに相談しましょう。相談支援センターでは、地域のがん患者さんからの相談も受け付けています。治療費の大半は公的医療保険が適用となり、患者さんの自己負担は治療費の1~3割です。さらに高額療養費制度を利用すると、一定限度額を超えた自己負担分の払い戻しが受けられます。

知っておきたい肺がん医学用語集

腫瘍:組織のかたまり。良性と悪性がある。

良性腫瘍:がんではない腫瘍のこと。無限に増殖したり、ほかの臓器に転移したりすることはない。

悪性腫瘍:がん化した腫瘍のこと。無限に増殖し、ほかの臓器に転移して生命に著しい影響を及ぼす。

病期(ステージ):がんの広がりの程度を示す言葉で、Ⅰ(組織内にとどまっている)からⅣ(ほかの臓器に転移している)の数字で表される。治療の効果でがんが小さくなっても病期(ステージ)が若い数字になることもなく、最初の診断のまま用いられる。

組織型:がん細胞やがんの組織の「顔つき」。主に病理医が診断診断する。組織型によって治療が異なる。肺がんでは組織型がはっきりとは決められない場合がある。

浸潤:がん細胞が増殖して、周囲の組織に侵入して壊していくこと。

転移:がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗ってほかの臓器に移動し、そこで広がること。

リンパ節:病原菌や異物による感染と闘うための小さな豆状の器官。体中にあり、リンパ管でつながっている。

原発巣と転移巣:がんが最初にできたと考えられる部分が「原発巣」。そのがんが転移した部分が「転移巣」。転移巣のがんは原発巣のがんに準じた治療が行われる。

バイオプシー((生検):組織を採取して、がん細胞があるかどうかを顕微鏡で調べる検査。

生存率:診断や治療開始から一定期間(1年、5年など)経過したときに生存している患者の比率(割合)。病期や治療ごとに過去の数値から計算する。

生存期間中央値:診断や治療開始から生存率が50%になるまでの期間。「平均値」という言葉の替わりに使われる。患者個人の予後や余命を示すものではない。

予後:病状がどのような経過をたどるのかという見込みや予測。(高橋)