治療方針に大きく影響する病期
0期に近いほど、がんが小さくとどまっており、Ⅳ期に近いほど、がんが広がっています。肺がんでは、非小細胞肺がんか、小細胞肺がんかという組織型と、0~Ⅳ期のいずれの病期かの2つの要素で治療方針がほぼ決まるので、病期の決定は非常に重要です。肺がんと診断されたら、がんの大きさ、広がり、転移の有無から病期を決定するために、胸部Ⅹ線検査、胸部ⅭT検査などが行われるほか、転移しやすい脳、肝臓、副腎、骨などを頭部CT検査、腹部超音波検査、骨シンチグラフィ、PETなどで調べます。小細胞肺がんでは骨髄にも転移することがあるので、骨髄生検が追加されることがあります。
肺がんではどのような治療が行われますか?
肺がんそのものを治療する手術や放射線療法などの局所療法と全身に広がったがんを治療する薬物療法などの全身療法、これらを組み合わせる集学的治療に大別されます。病期と全身状態から、1人ひとりにベストな治療法が選択されます。
肺がんを治すために行われる治療には、手術、放射線療法、薬物療法(化学療法)の3つがあります。手術、放射線療法が肺がんそのもの(病巣局所)に的をしぼって行われる局所療法であるのに対して、薬物療法は肺がん(病巣)がいくつかある、あるいは肉眼的に限局しているようでも全身にがん細胞が散らばっている可能性がある場合に行われる全身療法であるという点で異なります。このほかに、がんがもたらす症状を和らげるための治療として緩和ケアがあります。
これらの治療は単独で行われるだけでなく、各々の利点を利用することにより治療効果が高まることを期待して、2つ以上を組み合わせて行われることがあります(集学的治療)。その組み合わせとしては、局所療法と全身療法が一般的です。例えば、目に見えないけれど残存しているかも知れないがん細胞を根絶する目的で抗がん剤を投与する術後補助化学療法や、単独よりも併用の方が高い効果を得られることが明らかになっている化学放射線療法です。後者には放射線療法を終えた後に化学療法を追加する遂次併用療法と、化学療法と放射線療法を同時期に始める同時期併用療法があります。ただし、集学的治療は副作用も相乗的に強まる傾向があり、化学放射線療法では同時併用が遂次併用よりも効果が高い一方、副作用が強まることもわかっています。
どのように治療を行うかは、がんの組織型、病期、年齢、一般的な全身状態、心臓・肺・肝臓・腎臓などの機能、ほかに罹っている病気などを考慮に入れたうえで決定されます。PSからは、手術、放射線療法、薬物療法、いずれも、PSグレード0~2までが一般的な適応とされています。
参照:全身状態をみるパフオーマンス・ステータス(PS )
グレード0;症状がなく、発症前と同じように社会活動できる。 グレード1;軽度の症状はあるが、歩行や家事、デスクワークはできる。 グレード2;歩行や身の回りのことはできるが、介助を必要とすることもある。 グレード3;身の回りのことはある程度できるが、しばしば介助を必要とする。日中の半分以上の時間を横になって過ごす。 グレード4;寝たっきりの状態で、常に介助を必要とする。(高橋)