痛みとうまく付き合うテクニック 

痛みとうまく付き合うテクニック 

「痛み」のメカニズム

痛みでお悩みの方が病院に行くと、複数の薬をもらうことが多いと思います。しかし、なぜこんなにいろいろな薬が必要なのか、それぞれどんな効き目があるのかがわからないと、やがて毎日たくさんの薬を服用することが面倒になってきます。そして、「効いていないようだから、やめちゃおう」などと勝手に決めてしまう方も多いようです。

当然のことですが、薬にはそれぞれの役割があり、複数の薬はどれも必要があって出されています。そのことを理解していただくためには、痛みとはどんなもので、どのようにして生まれるのかという痛みのメカニズムをわかる必要があります。

では、あらためて痛みとは何かを考えてみましょう。世界の疼痛研究、疼痛治療のリーダーである国際疼痛学会(International Association of the Study of Pain)では、痛みを「実際に組織損傷が起こったか、または組織損傷の可能性があるとき、またはそのような損傷を表す言葉によって述べられる不快な感覚及び情動体験」と定義しています。 

長くて難しい表現ですが、痛みが、「情動」、すなわち感情を含んでいるという点です。つまり、痛みには好き、嫌いと同じように個々の感情が入っており、私たちは頭の中で感情を介して傷みを感じているのです。このような傷みにより、時には日常生活が制限され、生活の質まで低下させてしまいます。これは感情を含んでいるだけに厄介で、痛みのせいでさらに気分が落ち込み、日々の楽しみまで奪われてしまいかねません。

治療や研究のためには、痛みを評価する必要がありますが、傷みには感情が絡んでいるので、人によって大きな幅が出てきます。視力や聴力は数字で表すことができますが、痛みはそうはいきません。痛みの程度を把握して数値化するしかないのです。そこでVAS(Visual Analog Scale)という評価法が使われます。(高橋)