東京医科歯科大学病院の公開講座に行きました(第9回)

東京医科歯科大学病院の公開講座に行きました(第9回)

化学療法では、どのような副作用がいつごろ現れますか?副作用の種類や程度は、抗がん剤の種類によっても異なります。また、分子標的薬は従来の抗がん剤とは作用機序が異なるため、この薬剤特有の副作用が見られます。どのような副作用が起こりやすいのか十分に説明を受けましょう。

抗がん剤には細胞の分裂や増殖を防いだり、細胞の遺伝子にダメージを与えたりする働き(細胞毒性)があります。この働きのおかげで、がん細胞の増殖を抑え、死滅させることができるのです。しかし、同時に正常な細胞も攻撃してしまうため、副作用として身体に様々な症状が現れてきます。

これらの副作用は、抗がん剤を投与した直後から数日後、あるいは数週間後に起こりますが、その多くは治療をいったん休めば治ります。また、副作用に対処する薬や治療法の開発も進み、かなりコントロールできるようになりました。

副作用の種類や程度は、抗がん剤の種類によって異なります。たとえば、転移・再発を起こした大腸がんの標準的な化学療法には、FOⅬFOⅩ療法(5-FU+ロイコポリン+オキサリプラチン)もしくはFOⅬFIRI(5-FU+ロイコポリン+イリノテカン)療法の3剤併用療法に、いずれか1つの分子標的薬を加えた治療法が標準とされていますが、オキサリプラチンを含む治療法とイリノテカンを含む治療法では出現する作用機序が異なるため、この薬剤特有の副作用が見られます。

副作用には、自分で対処できてある程度は我慢してよいものと、我慢せずにすぐに病院に連絡したほうがよいものとがあります。化学療法を受ける際には、担当医や薬剤師、看護師から、どのような副作用(症状や起こりやすい時期など)が出るのか十分に説明を受け、どういう時に病院に連絡すればよいのか必ず確認するようにしましょう。

どんな副作用がいつごろ現れるのか?

自分でわかる副作用。投与日すぐに急性の吐き気・嘔吐、アレルギー反応(血圧低下、呼吸困難)、便秘・下痢。1週間以内に遅延性の吐き気・嘔吐、食欲低下、全身倦怠感、便秘・下痢。3週間後くらいから皮膚障害。1か月くらいで口内炎、下痢、全身倦怠感。数か月後手足のしびれ感、味覚障害。その後脱毛。頻度は1週間以内の症状が一番高いです。

検査でわかる副作用。投与後1週間から2週間で白血球減少、血小板減少。2週間から1か月くらいでだんだん肝機能障害、腎機能障害、心機能障害、貧血。数か月後間質性肺炎。

転移・再発を起こした大腸がんの主な化学療法とその副作用:殺細胞生抗がん剤①オキサリプラチンベース⑴FOⅬFOⅩ療法(5-FU、ロイコポリン、オキサリプラチン)末梢神経症状(手・足・口・喉の周りのしびれ、痛みなど)白血球・好中球減少(抵抗力の低下)貧血(めまい、倦怠など)血小板減少(出血しやすい)吐き気・嘔吐、食欲不振、アレルギー反応⑵ⅭapeOⅩ療法(カペシタビン、オキサリプラチン)手足症候群(手のひらや足の裏の痛み、腫れなど)末梢神経症状(手・足・口・喉のまわりのしびれ、痛みなど)白血球・好中球の減少(抵抗力の低下)貧血(めまい、倦怠など)血小板減少(出血しやすい)アレルギー反応、血管痛⑶SOⅩ療法(S-1、オキサリプラチン)末梢神経症状(手・足・口・喉のまわりのしびれ、痛みなど)白血球・好中球の減少(抵抗力の低下)貧血(めまい、倦怠‥)血小板減少(出血しやすい)下痢、吐き気・嘔吐、食欲不振、アレルギー反応、血管痛、涙目(涙管の閉塞などによる)②イリノテカンベース⑴FOⅬFRI療法(5-FU、ロイコポリン、イリノテカン)下痢、吐き気・嘔吐、食欲不振、白血球・好中球の減少(抵抗力の低下)貧血(めまい、倦怠感など)血小板減少(出血しやすい)脱毛⑵IRIS療法(S-1、イリノテカン)下痢、吐き気・嘔吐、食欲不振、白血球・好中球の減少(抵抗力の低下)貧血(めまい、倦怠など)血小板減少(出血しやすい)脱毛、涙目(涙管の閉塞などによる)③その他のTAS-102療法(TAS-102)白血球・好中球の減少(抵抗力の低下)貧血(めまい、倦怠など)血小板減少(出血しやすい)下痢、吐き気・嘔吐、食欲不振、だるさ。分子標的薬:①セツキシマブ、バニツムマブ皮膚症状(ニキビのような発疹、皮膚の乾燥・炎症など)爪の周りの炎症・感染、アレルギー反応 、間質性肺疾患(間質性肺炎など)低マグネシウム血症などの電解質異常,眼障害(角膜炎など)②べバシズマブ、ラムシルマブ高血圧、粘膜からの出血(鼻血など)タンパク尿、白血球・好中球の減少(抵抗力の低下)消化管穿孔(消化管に穴があく)創傷治癒遅延(傷口が治りにくい)がんからの出血、血栓・塞栓症(動脈や静脈の中に血のかたまりが出来る)③レゴラフェニブ肝機能障害、手足症候群(手のひらや足の裏の痛み、腫れなど)高血圧、粘膜からの出血(鼻血など)がんからの出血血小板減少(出血しやすい)消化管穿孔(消化管に穴があく)血栓・塞栓症(動脈や静脈の中に血のかたまりが出来る)(高橋)