咳は咳喘息以外の原因でも起こります。日本で結構多い理由として「慢性気管支炎」や胃から胃酸が逆流してくる「胃食道逆流症」があります。なぜ胃酸の逆流が咳を誘発させるのかというと、逆流した胃酸によってのどが炎症を起こしてしまい、その結果咳が止まらなくなるのです。これは中高年以上の女性に多いと言われています。中高年以上の太っている女性で咳が続く場合は、胃食道逆流症が原因である可能性が高いのです。
咳喘息の場合、何の治療もしないで5年間ぐらい経つと、そのうちの3人に1人は「ヒューヒュー、ゼイゼイ」が始まってしまいます。したがって、なるべく早めに治療した方がよいのです。吸入ステロイド薬を使う事によって、咳喘息から典型的な喘息になる事を防ぎます。
他にⅭOPⅮ(慢性閉塞性肺出棺)と言う病気があります。ⅭOPⅮ(慢性閉塞性肺疾患)はchronic obstructive pulmonary diseaseの略です。ⅭOPⅮとは、たばこの煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することによって生じる肺の炎症性の疾患です。「たばこの煙を主とする」とあるのですが、日本におけるⅭOPⅮの原因はほとんどたばこです。我が国においてⅭOPⅮは「タバコ病」といっても間違いないと言えますが、発見途上国などでは今でも大気汚染がひどい国もあるので、大気汚染もⅭOPⅮの原因になっています。
日本においては、ⅭOPⅮの原因の大体95%が喫煙にあると言われています。ⅭOPⅮの認知度はまだ高くないのですが、実はありふれた病気です。NIⅭEスタディと言う日本におけるⅭOPⅮの有病率を調査したものがあります。これによると日本国民全体のⅭOPⅮ有病率は、40歳以上の方を中心に見ると8,5%となっています。ですから、喘息の患者さんよりⅭOPⅮの患者さんの方が、40歳以上でみるとはるかに多いのです。
40歳以上の方の有病率が8,5%だと、もしかすると2000万人ぐらいがⅭOPⅮになっていてもおかしくないという計算になります。ところが、ⅭOPⅮで来院する方はそのうちの5%しかいない。ⅭOPⅮなのにそれに気が付かず、息が苦しくも病院に来ていない人がいるという現状がわかります。そして幸運にもたばこを吸っている方の1/3しかⅭOPⅮになりません。すなわち、たばこをいくら吸っても3人に2人はⅭOPⅮと言う病気にならないのです。
この原因が「たばこ感受性」と言うものです。これもある程度生まれつき決まっているものらしいです。3人に2人はいくら吸っても大丈夫だということです。ⅭOPⅮの患者さんは主訴が「息が苦しい」ということですが「たばこが原因だから、たばこをやめましょう」というと「周りの人はみんな吸っているんだ。周りの人は大丈夫なのに、なんで自分だけ息苦しいんだ」と言い返されるとのことです。「でも、あなたは残念ながらⅭOPⅮになる3分の1に当たっているから仕方がないんです。」と言ってもなかなか理解されません。
本当のことを言うと、喫煙者でⅭOPⅮになる方はラッキーなのかもしれません。3分の2の方はいくらたばこを吸ってもこの病気にならない。だから、たばこを吸い続ける。そうするとがんになる可能性が極めて高くなる。たばこをだいたい40年間1日20本吸うと、何も吸わない方と比べてがんになる確率は44,4倍高くなると言われています。そんなわけで、ⅭOPⅮはタバコ病だと言っても、なかなか認知されづらく、そこが難しいところです。(高橋)