昨年、健康講座に行きました(第7回)

昨年、健康講座に行きました(第7回)

病気以外で死亡者数が20年前の1/4に減ったものがあります。それは、交通事故による死亡者数です。喘息による死亡者数は交通事故死亡者数と同じような形で減っています。

喘息で亡くなる方が減っている理由はいろいろとあります。吸入ステロイド薬のおかげだけではありません。他にもいろいろな要因があります。交通事故死亡者数が減少した理由も、警察の視点では、飲酒運転のとりしまりの強化やシートベルトの着用の徹底化がその理由になりますし、自動車メーカーの立場では自動車の性能が飛躍的に向上したからということになるでしょう。同様に喘息の場合もいろいろな側面があるかと思います。しかし、喘息で亡くなる方の数がこれほど減った現状を作ったのは、吸入ステロイド薬の普及です。

オリンピック選手などの有名なアスリートのなかにも喘息の方はいます。ですが、吸入ステロイド薬を医師の指導のもとにきちんと服用すれば、さまざまなスポーツでものすごく高いパフォーマンスを示すことが出来るのです。運動選手には、喘息の方がものすごく多いと言われています。これは運動に起因する面もあります。日本の喘息有病率は5%ですが、オリンピック選手の場合は20%ぐらい、つまり5人に1人は喘息だと言われています。しかし、薬をしっかりと使えばものすごく高いパフォーマンスができて、金メダルだって取れます。そういう点では、吸入ステロイド薬はすごい薬だと言えます。

喘息での死亡者数が20年前の1/4まで減ったのは日本のみの話です。残念ながら世界的には、まだまだ死亡者数が減っていない現状があります。死亡者数が減らない理由の一つに、喘息で亡くなる高齢者の人数がなかなか減らないということがあります。実に残念なことですが、これは事実です。ですから、高齢者の方にいかにしっかりと吸入ステロイド薬などの治療を受けていくのが今後の大きな課題として存在しています。

今度は、「咳」の事です。多くの人にとって、咳から思いうがぶ病気は風邪だと思います。風邪をひくと、咳が出始めることが多いと思います。そして、そのような場合、抗生剤や咳止めなどの薬を服用するわけです。

咳以外の風邪の症状として鼻水、発熱、咽頭痛といったものがありますが、風邪が治り、これらの症状が治まったあとも咳だけがは2~3週間ぐらい続きます。子の咳は問題ありません。これは生理的に仕方ないもので「風邪症候群後遷延性咳嗽(ポストインフェクシャス・カフ)」と呼ばれています。風邪の他の症状が全部よくなったとしても、咳だけは残ります。これは普通の事です。

風邪の諸症状は普通2週間ぐらい続き、そしてそのあとに風邪症候群後遷延性咳嗽があるので、4週間ぐらい咳が続く事になります。風邪などの感染症に起因する咳は4~6週間ぐらいまで続くのが普通のことです。ところが、それ以上続く、風邪が完全に治ってから6~8週間たっても咳が止まらない場合は、風邪以外の原因を考えるべきです。

4週間以上続く咳を「遷延性咳嗽」と呼び、8週間ぐらい続く咳を「慢性咳嗽」と呼びます。風邪が治ったあとも1か月以上咳が続く場合、風邪以外の原因が何かあるかもしれません。ただし、タバコを吸う方は別です。タバコを吸う方の場合はずっと咳が続いてもおかしくはありません。

慢性咳嗽はどうして起こるのでしょうか。日本において圧倒的に多いのは、「咳喘息」です。咳喘息とは基本的には喘息と同じ気道の炎症です。「ヒューヒュー、ゼイゼイ」というような普通の喘息と咳喘息にはほとんど違いがありません。咳喘息は咳だけが症状として出る喘息です。

したがって、症状の特徴は一般的な喘息と変わりません。日内変動性がありますし、寒暖差・湿度差で発作が起きると言う特徴もあります。ですから、夜から明け方の時間帯は咳がひどくなります。また、寒暖差があると咳が出ます。これらが咳喘息の特徴です。(高橋)