階段を登るときの息切れがⅭOPⅮの初期症状ですが、ⅭOPⅮの患者さんの特徴として、会話の際に相手から「何言っているか聞こえない。もう一回話してくれる?」と言われるという事があります。これは明らかに肺活量が落ちていることが原因です。その結果、しゃべるときの声が小さくなってしまうのです。
もう一つ、無意識のうちに現れる特徴があります。今までは易の階段を歩いてのぼっていたのに無意識にエレベーターやエスカレーターを利用するようになってきたという現象です。これは無意識のうちに「階段を登ると息切れするな」という気持ちが働くから、そうなるのです。そのようなとっころに普段から気を付けると早期発見、早期治療につながります。
たばこはやはり肺に悪い。タバコに起因する病気は結構多いのです。たとえば、虚血性心疾患、心筋梗塞です。あと、脳梗塞。脳血管症といった病気。これらの病気の1/5から1/10くらいは明らかにタバコが原因です。もちろん、発展途上国などでは、たばこ以外の原因で先ほどの病気になる場合もありますが、日本ではほとんどの場合、タバコが病気の原因になっています。
アメリカにおいてⅭOPⅮは取り残された生活習慣病という扱いになっています。なぜならアメリカでは喫煙者数がかなり減っているからです。一方日本では1965年から1998年の間で生活習慣病に起因する心血管疾患や脳卒中で亡くなる方が少しずつ減ってきているにもかかわらず、たばこを吸う生活習慣に起因するⅭOPⅮの死亡率はグングン上がってきています。ですから、たばこはやめましょう。
生活習慣病との関連で重要なことがあります。血圧が高い方、糖尿病の方、コレステロールが高い方などいわゆる生活習慣病を持っていて、これらの病気の方のうちおよそ20%がⅭOPⅮであることが分かります。ⅭOPⅮと生活習慣病はすごく高い確率で合併しています。
日本の喫煙率は、昭和40年代以降、スーッと下がっています。男性の喫煙率がものすごい勢いで下がってきていますが、その一方で女性の喫煙率の減少はあるところで止まっています。ただし、男女合わせた平均の喫煙率が20%を超しているのは、先進国の中では日本だけです。
1年間に喘息で亡くなった人は1500人程度までに減ったが、ⅭOPⅮでの死亡者数は逆に増えているそうです。1996年の時点では喘息で亡くなる方が年6000人いるのに対してⅭOPⅮで亡くなる方は年1200人でした。ところが、現在の1年間の死亡者数は、ぜんそくの1500人に対してⅭOPⅮが15000人になっています。ⅭOPⅮで亡くなる方がどんどん増えています。
まずはたばこをやめることが先決です。日本でのたばこの消費量は1996年がピークで、それ以降消費量は少しずつ減ってきています。アメリカにおいても喫煙率が下がってから30年後にやっとⅭOPⅮによる死亡者数が減ったと言われています。日本では2026年ころから死亡者数が減ってくるはずです。
呼吸機能というものは年齢とともにどんどん低下します。たばこを吸っていればさらに低下してしまいます。呼吸機能の障害が出る前に、つまり早いうちにたばこをやめれば、そこから呼吸機能が改善する可能性は高くなります。ところが、悪くなってから禁煙してもあまり呼吸機能は回復しないのです。(高橋)