帝京大学の公開講座に行きました(第4回)

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変形性関節症はどんな病気?

関節は骨と骨の間に軟骨というクッションがありますが。その軟骨がすり減ってしまい、なおかつ.その間にある水も失われるなどして、骨どうしがガチャガチャとあたるようになることにより起こる病気です。なぜ軟骨がすり減るのでしょうか。実は人間は50年以上生きるようにできていません。平均寿命が50年を超えるのは戦後のことで、人類は有史以来、平均寿命がこんなに長くはありません。

そのような状況ですから、人間の関節というものは、60年、70年、80年と使われることを想定してできていません。そのため、長寿となるとこのようなことが起きてしまいます。

次に軟骨の仕組みですが、スポンジ状の構造があって、そこにコンドロイチンやヒアルロン酸というものが入っています。この軟骨がすり減って骨と骨が当たり始めると安定が悪いので、骨が出っ張って間に広がり何とか安定させようにします。そうなってしまったらどうするかというと、最近は大きな関節であれば、関節全体を取り換えてしまいます。人工関節は普通に使えば最近では20年も持ちます。

また、再生医療の研究が進み、時代はips細胞から軟骨が作られる所まで来ようとしています。おそらく今後は自分の細胞でできた自分用の軟骨ができて、それを整形外科の先生に打ってもらうような時代がくるかもしれません。そうすれば、今まで薬などでは再生できなかった軟骨が再生できるようになりますが、今はそこまでいっていないので困ったら人工関節です。

変形性関節症の起こる仕組みですが、年齢も関係していますし、ある所に力がかかりすぎてもなります。昔はタイピストの手の関節によく起こりました。スポーツ選手などでも特定の関節に起こるということがあります。年齢が進むと、なぜか女性に患者さんが多いことが分かっています。では、どれくらいの人が変形性関節症になっているかというと、女性は80歳を越えると約90%とほとんどの方がなっていて、60歳でも約40%の方が変形性関節症になっています。これは肥満が原因です。つまり重力が良くないのです。延々と直立して歩き続けていると、股関節や膝関節に負担が掛かります。そのため、体重を減らしたほうがいい。これが基本になります。

変形性関節症の治療は、痛いときは痛み止めを使います。普通の痛み止めは腎臓や胃に悪いこともあるので注意が必要ですが最近はそのような副作用を減らしたお薬も出てきていますからよく相談しましょう。

それからヒアルロン酸やステロイドを関節に入れると効きます。ヒアルロン酸は多糖体でねっとりしていて、いかにもクッションになりそうです。こうしたものを入れると、入れたとたんに「あれ、何か動くし、いい感じだな」ということになります。しかし、これはヒアルロン酸そのもののおかげではないことが分かっています。実は注射をするという事自体がいいらしいのです。

ヒアルロン酸の効果を確かめるために、次のような実験を行いました。患者さんを二群に分けて、片方にはヒアルロン酸を、もう片方には生理食塩水を注射します。もちろん実験に参加した患者さんは、自分がどちらかなのかは分かりません。そして、どれくらい良くなったかということを日誌に書いてもらうのですが、生理食塩水を注射した人も、ヒアルロン酸を注射した人も、みんな注射したとたんにグッと良くなります。注射をしない人はそんなに良くなりません。

つまり、何かというと、明らかに痛みは引くのですが、それは必ずしもヒアルロン酸が効いているというわけではなく、生理食塩水でも注射すると効果があるという事です。アメリカの整形外科学会では「ヒアルロン酸は変形性関節症には注射するな」と強く言っています。しかし、「痛いのどうにかして」と来れば、痛み止めは腎臓に良くないし、あまり痛み止めばかり出したくないので「じゃあ、とりあえず注射しよう」ということになります。ヒアルロン酸は決して安い薬ではないので、どこまでこういったものを医療として認めるかということも今後の課題だと思います。(高橋)