お茶の水女子大学の公開講座に行きました。お茶の水女子大学の学長である室伏きみ子先生の講座で、内容は変形性関節症の改善・治療薬の開発研究についてでした。
少子高齢化社会の様々な課題への対応として、人口構造の変化に対応した新たな社会システムの構築が必要で、年齢・性別等に拘らず生活とのバランスを大切にしつつ社会に参画できるようにすることです。
ポジティブエイジングを目指して健康長寿を実現するためには、⑴ロコモシンドロームの予防と改善。治療薬の開発。→認知症の発症を防ぎ、高齢者の活力増進、労働参加、医療費軽減への効果⑵ウエアラブルセンサーを用いた日常的な心身の健康管理⑶高齢者に適した栄養摂取や運動法の研究、開発と実践
そこで、お茶の水女子大学理学部では神経栄養因子作用と沈痛、抗炎症作用を持つ生理活性脂質の発見をしたそうです。今はまだラットの実験段階ですが、変形性(膝)関節症の患者数が多いため、治験から厚労省の新薬認可も早いのではないかということです。薬品会社ももう決定しているそうです。最初多発性硬化症の薬として開発したそうですが、変形性関節症の治療薬として、根本的な治療薬としての有効性を示す結果がでたそうです。
変形性膝関節症は、運動器の疾患の中で最も頻度の高い疾患で、日本国内で、1000万人以上、予備軍では3000万人以上。加齢、肥満、怪我など、が原因で、関節軟骨の摩耗から健康寿命の短縮やQOⅬの低下をきたします。現状では根本的治療はなく、消炎鎮痛剤やヒアルロン酸注射による対症療法が主流で、患者さんの心身への負担、経済的負担はおおきく、最終的には人工関節手術となります。2013年6月に米国整形外科学会よりHA注射は効果なしと発表されました。
そこで、お茶の水女子大学では、1985年に粘菌環状Physarum酸から単離した環状ホスフォチジン酸(cpA)を発見したそうです。ヒト血清や動物組織(脳)からも単離したそうです。神経栄養因子作用、鎮痛作用、抗炎症作用、がん細胞浸潤抑制作用を示したそうです。そして、効果の高い誘導体の開発から、大量での効果的な製造法も確立し、架剤等(2ccPA)としての供給を確保したそうです。2ccPAは軟骨組織のクッションとなるプロテオグリカンの減少を抑制するそうです。2ccPAはоAモデル動物の疼痛と主張を顕著に抑制、軟骨組織の粗造化や軟骨組織の配列不整を抑制したのでОAの根本的治療薬として有望との結果がでたそうです。
そして、2ccPAのОA患者さんではヒアルロン酸の合成を促進し、炎症サイトカインを抑え、基質分解酵素の産生を抑制しました。ОA患者さんの根本的治療薬としての有効性を示す結果がでたそうです。
薬の認可に向かっていますが、まずアメリカFⅮAに相談している段階とのことでした。日本での認可は数年かかるそうですが、認可されれば医療費高騰の抑制になることと思いました。(高橋)