がんの原因遺伝子異常は2つに分類されます。①がん遺伝子は通常は細胞の増殖に関与し、変異により機能が更新し、1つの遺伝子変異で機能異常して、際限なく分裂、増殖します。②がん抑制遺伝子変異は通常は細胞周期のコントロールやⅮNA修復に関与して対立遺伝子の両者の変異により機能が消失して際限なく分裂、増殖します。
遺伝子のⅮNAはいつも傷つき、修復されています。1日1細胞あたり数万個のⅮNA損傷が発生し生理的反応で修復、細胞死となります。原因は複製時のエラー、ウィルス、放射線、紫外線、発がん物質などです。ⅮNAは鎖のようにつながっています。1つの細胞に約30億個のⅮNAがあります。2重らせん構造になっています。そして、がん遺伝子が活性化、がん抑制遺伝子の不活性化、その他の遺伝子変異が蓄積してがんとなります。
私たちの体の中では1日5000個のがん細胞ができています。細胞の増殖(アクセル)や遺伝子修復(ブレーキ)などによりがん化します。ほとんどは免疫細胞により退治されています。そのごく一部が、がんとして育っていきます。大部分のがんは偶発的(散在性)で、遺伝によるものではありません。
がんの転移とは、がん細胞が最初に発生した場所(原発巣)とは別の場所に到達し、そこで再び増殖して腫瘍を作る事です。がん細胞が100万個(1mm程度)に達すると転移が起こります。がんと初めて診断した際に見つかる場合と、がんを切除した後に見つかる場合(再発)があります。
転移する細胞は数々のハードルを越える必要があります。1、原発巣からのがん細胞の離脱と脈管(血管やリンパ管)内へ侵入2、脈管内での移動3、転移臓器の血管内皮への接着4、転移臓器への浸潤5、転移臓器内での増殖ほとんどは免疫などにより自然淘汰され、脈管内に入った数100万個に1個程度が転移巣を形成すると推測されています。これだけのハードルを越えるので悪性度は高くなります。
がんの再発とは、臨床的にがんが治療により一旦消失したのちに再び出現することです。局所再発とは最初にできた場所ぁ所に再発することです。領域再発とは、最初にがんができた場所に近い領域リンパ節などに再発します。遠隔再発(転移)とは最初のがんの発生場所から離れている器官または組織に再発することです。目に見えない小さながんが取り切れずに遺残したのを局所・領域再発といい、最初にがんが見つかった時に既に存在していたが、小さいので検査で分からなかったのを微小転移といい、次第に大きくなって転移として発見されます。(高橋)