「専門医に学ぶ乳がんの正しい知識」というがん検診講演会に行きました(第9回)

「専門医に学ぶ乳がんの正しい知識」というがん検診講演会に行きました(第9回)

全身療法(薬物療法)は手術可能乳癌の術前・術後、局所進行乳癌の術前、転移・再発乳癌に適用されます。転移・再発乳癌にのみ使用できる薬剤があります。

術前療法とは、術前薬物療法で腫瘤をできるだけ小さくして切除ができないような局所進行乳癌を切除できるようにして、手術可能乳癌の温存率を向上させます。メリットとしては①乳房温存率が向上②局所進行乳癌の切除率向上③薬の効果を早く知ることが出来る。デメリットとしては①手術を後にすることに対する不安②過剰治療になる可能性がある③検査回数が多くなるため費用がかかる④治療前の組織保存量が少ない⑤病理学効果を調べるためには手術が必須。

手術可能乳癌における薬物療法は、再発リスク(リンパ節転移などの予後因子)を減らし、サブタイプの効果予測をします。ホルモン療法がいい人かHerが効く人かの予測をします。手術可能乳癌のうち30%が再発し、70%は手術のみです。乳癌の再発部位は温存乳房で、局所(患側胸壁で、所属リンパ節と遠隔(骨、肺、肝など)主な転移・再発部位と症状は局所、領域リンパ節ではしこり、疼痛が起こり、肺転移では、咳、息切れ、呼吸困難が起こり、骨転移では、痛み、骨折が起こり、肝臓転移では、食欲不振、腹部膨満感、黄疸になり、脳転移では、めまい、けいれん、嘔吐、頭痛、意識障害が起こります。

再発・転移乳癌の治療は初期治療に比べて病態は複雑、個別性が高く、完治が望めません。QOⅬの向上、緩和治療、生存期間の延長の目的とします。薬物療法+症状緩和が基本です。内分泌療法の効果が期待される場合は内分泌療法から実施。ただし、生命のリスクが高い転移の場合は抗がん剤から実施します。Her2陽性乳癌は抗Her療法が中心です。骨転移がある場合は骨吸収抑制剤を使います。必要に応じて局所療法を実施します。手術(脳転移、局所領域再発)と放射線療法(脳転移・骨転移・局所再発など)。

手術後いつ再発が見つかるか?ホルモンレセプタ―陰性(増殖速度が速い乳がん)では5年以内。ホルモンレセプター陽性(増殖速度が遅い乳がん)では5年から10年くらいです。(高橋)