痛みとうまく付き合うテクニック(第17回)

痛みとうまく付き合うテクニック(第17回)

近年、「ロコモティブシンドローム」という言葉をよく耳にするようになりました。これは運動器障害により、要介護になるリスクが高い状態になることです。つまり、体を動かさないでいるとあちこち痛む。しかも、そのままでいると、加齢変化に伴う障害で機能低下したときには寝たっきりになるという意味です。

 実際、体を動かさないでいると、痛みはますます強くなります。ですから、神経ブロックや内服薬、貼り薬などで痛みを軽減させたうえで、自ら動くことが大切です。それも、引っ張られたりつられたり、人に動かしてもらう他人任せの運動ではありません。あくまで自分から動くことで筋力、バランス力が維持改善され、徐々に痛みが減少することも多いのです。

 最新の「腰痛診療ガイドライン」でも、慢性痛に対する運動の有効性は信憑性が高いとされています。ギックリ腰などの急性期にはあまり意味がないかもしれませんが、それでも日常生活を送るうえでは大いに意味があるはずです。たとえ痛くても動かなければだめなことは、急性期でも慢性期でも同じで、なかでも慢性期は積極的に動かす必要があるということです。

          起床時の工夫

 次は朝起きるときの工夫です。仰向けのまま、前にガバッと起きると、腰に大きな負担がかかります。上半身の約60%の重さが腰にかかってくると言われています。ですから、起きるときも前ではなく横に転がるように、さらにはベッドの枠を利用して足を先に下ろし、その反動で起きるようにします。

 手の位置を適当な場所に置けば、すっと起き上がれるはずです。おそらく腰痛を患っている方は、自然にこのような形で起きているのでしょうが、こうすれば腰にかかる負担ははるかに減るのです。

           くしゃみの仕方

 寒くなってくると、くしゃみが出ることが多いと思いますが、実はこれも注意が必要で、肋骨が折れたり、坐骨神経痛になったりすることがあります。これはくしゃみによって、腹圧が体の曲がったところにかかり、腰に大きな負担となるからです。

 くしゃみをするときは、足を適度に開いて立ち、腕を伸ばして、手のひらを壁につけます。両手.両足に力を入れ、壁に体を押し付けるようにします。すると、背骨や腹筋、背筋などの体幹部に力が入り、腹圧が分散されます。

 壁がない場合は、テーブルでもどこでもいいので、手をついて体を押し付け、体幹の筋肉を使いながらくしゃみをするようにしてください。そうすれば、「ハクシヨン!」とやっても腰には響きません。(高橋)