痛みとうまく付き合うテクニック(第16回)

痛みとうまく付き合うテクニック(第16回)

自ら体を動かして痛みを軽減

 一例として、交通事故で外傷を負ったいわゆる交通外傷の患者さんを挙げます。交通事故で肋骨が折れただけでなく、多数の肋間神経もダメージを受けました。こうなると痛みが長く続き、しかも1個1個の神経は修復できません。痛み自体がかなり強く、慢性痛なので強まったり、弱まったり、体調によって変化します。

 そこで、脊髄刺激療法を行うことで、ある程度痛みが改善すると、患者さんはすぐ積極的に体を動かし始めました。「脊髄刺激療法によって、痛いときは自分で刺激を強くするようにして、痛みをコントロールできるからいい」ということでした。

 もちろん、慢性痛は「一直線に完治へ」とはなりません。体調の良し悪しや疲れ、ストレス等で強まったり弱まったりしています。しかし、通院しながら神経ブロックや飲み薬で痛みを抑え、社会生活を送れます。痛いからといって寝てばかりいないで、体を動かすことがいかに大事なのかがよくわかります。

 「痛みを人生の一部として受け入れ、これに適応する」これは世界的に有名なメイヨー・クリニックが掲げる標語です。治療を頑張って、受け入れられるくらいに痛みを減らし、そのうえで痛みを人生の伴侶とする。そして、痛いにもかかわらず充実した人生を楽しむことを目指そうということです。

 痛かったら、そんなことは無理だと思うかもしれませんが、痛みが減ったら、体を動かしていただくことが患者さんへのお願いです。いずれにしても痛みは必ず変化し、ずっと同じ状態は続きません。例えば、体を動かしていけば痛みは減ります。「痛みはあるけれども、あれはできる」「これもできる」と肯定的にとらえてがんばれば、やがて本当に痛みが減り、できなかったことができるようになっていくのです。(高橋)