個別化が進む薬物療法
Ⅲ期以降に治療の主体となってくる薬物療法は、組織型と遺伝子変異の有無で戦略が分かれます。扁平上皮癌であれば、初発(1次)治療としてプラチナ併用治療を実施し、再発(2次)すれば、ドセタキセルを試みます。非扁平上皮癌で遺伝子変異陰性の場合は、初発治療としてプラチナ併用療法(プラチナ製剤+ペメトレキセド、カルボプラチン+パクリタキセルなど)±べバシズマブを実施し、再発治療ではドセタキセルあるいはペメトレキセドを行います。非扁平上皮がんで遺伝子変異陽性の場合は、初発治療として分子標的治療(EGFR阻害剤、AⅬK阻害剤)かプラチナ併用療法(プラチナ製剤+ペメトレキセド、カルボプラチン+パクリタキセルなど)+-べバシズマブのいずれかを行い、再発したときは初発治療とは別の治療を行い、再再発(3次)時にはドセタキセルあるいはペメトレキセドを投与します。
そのほかに、初発治療や再発治療でプラチナ併用療法±維持治療、再再発治療で分子標的治療が試みられることもあります。一般的には、間質性肺炎のリスクがかなり高い場合などを除き、分子標的治療は初発か再発の段階で行われ、両者の生存期間に差がないことが明らかになっています。
治療法は薬剤の副作用や程度、全身状態(PS)などを考慮して選択されますが、プラチナ製剤は、脱毛や吐き気の副作用が非常に強く入院点滴が必要なシスプラチンよりも、副作用が少なく外来点滴が可能なカルボプラチンの選択が多くなっています。第3世代抗がん剤は一度使用すると次の段階であまり使わないため、例えばペメトレキセドを初発治療で用いると再発治療では別の薬剤を使用します。
副作用には早めに対応
個人差はあるものの、抗がん剤を投与した当日より治療が進むにつれ、アレルギー反応、脱毛、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、口内炎、白血球や血小板の減少など、さまざまな副作用が現れます。副作用を抑える薬剤を併用したり、早めに対応したりすることで軽減できますが、副作用が強くなれば、抗がん剤を減量・中止せざるを得なくなります。
より良い状態で長く生きるためには、標準治療を予定通りに完遂することが重要です。副作用やつらい症状があれば遠慮せずに担当医や看護師、薬剤師に早めに申し出て、副作用を軽減する治療や緩和ケアを受けましょう。
非小細胞肺がんの標準化学療法はプラチナ併用療法=プラチナ製剤+第3世代抗がん剤;プラチナ製剤はシスプラチン(入院点滴)カルボプラチン(外来点滴);第3世代抗がん剤はペメトレキセド、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ビノレルビン、イリノテカン、S-1
非扁平上皮癌の場合±血管新生阻害剤;べバシズマブ(脳転移、扁平上皮がん、腫瘍が大血管に隣接している場合、血痰などがある場合は使用不可。(高橋)