照射期間中もがん細胞は増殖しているので、照射を開始したら休まず予定通り終了することがことが重要です。放射線が正常細胞を傷つけることを防ぐために、治療前にⅭT画像やPET画像を用いてシュミレーションし、最適な照射範囲や方法が決められます。(治療計画)照射は少しずつ何度も繰り返す方法が取られ、たとえば、非小細胞肺がんの標準的な治療では、60Gyを2Gyずつ1日1回・週5回の頻度で6週間かけて照射します。さらに、がん病巣に高線量を集中的に照射する(定位放射線治療)工夫が行われ、成績も向上しています。
副作用として治療中から皮膚炎、食道炎などが現れることがあるほか、治療後6か月までは放射線肺炎が起こることがあります。症状が強ければ、治療を含めた対応が検討されます。まれに治療から6か月以上経った後に重い副作用が生じるため、指示通りに受診し、何かあれば、担当医に連絡することが大切です。
粒子線治療とは?粒子線治療は、陽子線、重粒子線を利用して、がん病巣を破壊する最先端の放射線療法です。陽子線、重粒子線は、がんの深さに応じてエネルギーのピークをコントロールできます。この性質を利用し、がんのある深さで最大のエネルギーを発揮するように照射すれば、強いエネルギーでも周囲の正常組織への影響を最小限に抑え、がん病巣を集中的に攻撃でき、高い治療効果が得られます。治療の一部に健康保険が使える先進医療の適用になりますが、粒子線治療にかかる費用は全額自己負担で、実施施設も限られています。比較的早期で何らかの理由で手術できない場合には、手術と同等の効果が得られる治療法として期待されています。
非小細胞肺がんではどのような薬物療法が行われますか?非小細胞肺がんの薬物療法には、殺細胞性肺がん剤を用いた化学療法と、分子標的薬を用いた分子標的治療があります。がんの再発・転移を防ぐために、手術や放射線療法と組み合わせて、あるいは単独で行われます。
非小細胞肺がんの薬物療法には、抗がん剤によってがんの増殖を抑え、がん細胞を破壊する化学療法と、がん細胞だけが持つ生存・増殖に関与する物質を標的にした分子標的治療があります。前者では、プラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラスチン)と第3世代抗がん剤(ペメトレキセド、バクリタキセル、ドセタキセルなど)の併用療法(プラチナ併用療法)が標準化学療法とされ、全身状態に応じてプラチナ併用療法に血管新生阻害剤のベバシズマブをさらに併用する3剤併用療法が行われています。
薬物療法は、Ⅲ期以降、手術による根治が難しい段階になってから放射線療法と組み合わせて(化学放射線療法)、あるいは単独で再発・転移を防ぐために行われるほか、手術で根治が可能なⅠ~Ⅱ(ときにⅢA)期の術後に、残っている可能性がある目に見えないがん細胞を根絶し、再発を防ぐために術後補助化学療法として行われることもあります。その方法にはプラチナ併用療法のほか、日本ではⅠA期の一部とⅡB期の場合、経口抗がん剤のテガフール配合剤を1~2年間、毎日服用する方法が有効とされています。(高橋)