「がん治療を支える歯科口腔管理」という内容の講習会に参加しました。国立がん研究センター中央病院歯科医長である上野尚雄先生の講習会でした。
がん専門病院の歯科では、各種がんの治療中に生じる口腔内の諸問題に対し歯科的なサポートを行い、口腔粘膜炎、骨髄抑制期の歯性感染症,顎骨壊死などに対し、がん治療を安全に苦痛少なく、完遂する。経口摂取を支援し、QOLを維持することが目的ということでした。
術後肺炎の発生頻度は1.5%~6%で、術後肺炎が発生すると、ICU在室期間、入院期間及び死亡率が上昇すると言われています。そこで、病棟での口腔ケアを含む肺炎予防プログラムは肺炎の発症率を1/4に減少させました。手術前に深呼吸(腹式呼吸)の練習をして自己排痰をさせ、手術後は体位変換、病院内歩行、持久力訓練がリハビリテーション科の役割になるそうです。
食道がんの術後合併症は非常に多く、術後肺炎や無気肺など呼吸器に関する合併症が多いとのことでした。そこで、食道がんの術前からの口腔清掃の励行は術後肺炎の予防に効果がある可能性があります。
舌がん、咽頭がんの術前処置では、抜歯の可能性がある歯はすべて抜歯するようです。現在痛くなくてもレントゲンで根の部分に虫歯がある場合あらかじめ抜歯をしておくそうです。そこは、一般に歯科治療とはかなり治療方針が違うと思いました。
がん薬物療法中の口腔合併症では化学療法を受ける患者さんでは40%、造血幹細胞移植患者さんでは80%、口腔領域が照射野に入る放射線治療の頭頸部がん患者さんでは100%口腔合併症の割合だそうです。
抗がん剤は細胞分裂が活発な組織が影響をうけるので、消化器粘膜(口から肛門まで)と骨髄が影響を受けます。抗がん剤投与で、口腔感染症のリスクが上がります。唾液分泌の低下、口腔内セルフケアの低下、骨髄抑制による感染が原因です。大量化学療法等による骨髄抑制中には、口腔部位にも急性感染が高頻度に発症します。口腔内の感染部位としては歯周病が最も多いとのことでした。そこで、サポート治療として、ブラッシング指導歯必須です。まず、がん治療前に口腔の感染リスクを減らすことが大切です。
口腔粘膜炎の治療についてはまた次回のブログにて、説明させて頂きます。(高橋)