発作を起こす湿度差について。「明らかな発作の誘発因子」があることも喘息の特徴です。この特徴もすごく重要です。誘発因子としては、風邪の後、たばこの煙、生理の後、ペットと接したとき、アルコールを飲んだ後、ストレスなどの様々な因子があります。その他に一番重要な因子があります。
急に寒い所から温かい所に出たり、逆に暖かい所から寒い所に出たりすると咳が出る。これはかなり高い確率で喘息です。これは喘息の最大の特徴だと言えます。そしてこれは実は「寒暖差」ではなくて、「湿度差」が本当の原因です。本当の因子は湿度なのです。
寒暖差以外の要因として、運動によって喘息が悪くなるということがあります。特に子供の場合、体育の授業の後に喘息が悪くなる子がたくさんいます。なぜ運動のあとに悪くなるかというとこれも湿度がものすごく関係しています。一生懸命走ると呼吸回数がすごく増えます。「ハッハッハッ」と呼吸すると肺のなかにある水分が飛んでしまって、肺の中の湿度が低くなってしまう。その湿度差によって発作が起きるわけです。
しかし、喘息の子どもに勧められる運動もあります。それは、水泳です。水泳の場合、激しく運動をしても、肺の中の湿度があまり変わらないからです。
寒暖差や湿度差が生じたとき、あるいは運動後に、咳や「ヒューヒュー、ゼイゼイ」が出てくる場合は、喘息を強く疑ってもいいと思われます。
喘息の治療について。喘息によって亡くなる人数は、前回の東京オリンピックの1964年から1995年までの30年の間、ずっと年間約6000人という数字でした。
その状況を改善したのが、吸入ステロイドという薬です。これはボンベ内の薬剤を吸って服用するタイプの薬です。今、喘息において一番重要な薬と言われています。これらの薬は1990年代に入ってから少しずつ販売されてきましたが、それは喘息の原因が気道の炎症だと分かってきた時代と重なります。それまでは気管支がギュッと時々縮まるということで気管支を広げる薬による治療がメインでしたが、このころから気道の炎症を抑えなければいけないという方向に変わってきたわけです。
炎症を抑える薬を使った結果、これまで毎年6000人ほどいた喘息による死亡者数が、今では年1500人程度まで減っています。死亡者数が20年まえの4分の1まで減少したびょうきは他にはありません。(高橋)