HIV-PEPガイドライン(USPHS)が8年ぶりに改定されました。前版(2005年)からの重要な改訂点は2つあります。「基本レジメン」「拡大レジメン」という区別がなくなり、PEPレジメンは曝露の程度にかかわらず、全例3剤併用(TⅮF/FTⅭ/RAⅬ)を推奨。第4世代のHIV検査(抗原+抗体)であれば、followup期間は4か月に短縮可能。
選択される薬剤の組み合わせはTⅮF/FTⅭ(ツルバダ)1錠(300mg/200mg)フン1、RAⅬ(アイセントレス)2錠(800mg)分2が推奨されます。推奨の理由としては、副作用が少なく、効果が 高く、薬物相互作用が少ないということです。PEPを全例で3剤併用とした理由は⑴3剤のほうが2剤併用よりも高い効果が期待できる。⑵耐性ウィルスの可能性の観点からは3剤併用が好ましい。⑶最近の抗HIV薬は安全性、忍容性に優れている。⑷最近の抗HIV薬は副作用が少なく、高いアドヒランスが期待できる。
フォローアップ期間は4か月に短縮できます。HIVスクリーニング検査が第4世代のHIV検査(抗原+抗体)の場合、6週間後4か月後の3回。PEP薬の副作用チェックとしてⅭBⅭ、肝機能、腎機能検査を行い、2週間後の2回。HIV/HⅭV重複感染の曝露源からHⅭVの感染が判明した場合は1年後にもHIVスクリーニング検査を推奨します。
費用負担としては、医療機関内の医療事故による医療従事者等の感染予防対策は、各医療機関の責任において実施されるべきものです。予防内服に関する費用は、自費扱いとして協力病院の請求に基づき、事故が発生した医療機関が支払います。抗HIV薬の予防服用については、健康保険の給付の対象ではないが、感染の危険に対し有効であると認められる場合は労災保険の給付の対象となります。
Ⅽ型肝炎、エイズ及びⅯRSA感染症に係る労災保険における取り扱いについては、医療従事者等が、HIVの感染源であるHIV保有者の血液等に業務上疾病として取り扱われるとともに、医学上必要な治療は保険給付の対象となります。受傷等の後HIV感染の有無が確認されるまでの間に行われた抗HIV薬の投与は、受傷等に起因して体内に侵入したHIVの増殖を抑制し、感染の危険に対し有効であると認められる場合には、療養の範囲として取り扱います。
HBVの曝露後対策はg、B型肝炎ワクチン未接種者(HBsAg陰性者)とB型肝炎ワクチン接種者で少し違います。B型肝炎ワクチン未接種者の場合HBe抗原(+)でも(-)でもHBIG5~10ml(成人)小児では0,16~0,24ml/kgです。B型肝炎ワクチン接種者で、抗体陽性歴がある場合は、汚染血がHBs抗原(+)でも(-)でもあるいは検査実施できない場合で処置不要です。抗体陽性歴がない場合ではHBS抗原(+)だとHBIG2回またはHBIG1回とワクチン3回で、ハイリスクの血液であればHBs抗原(+)の処置に準じます。抗体反応不明の場合はまずはHBS.抗体検査実施し、抗体価が十分であれば処置不要で、抗体価が不十分であれば、HBIG1回とワクチンを追加接種します。
まとめると、HIVの針刺しによる感染リスクはとても低い。初回内服は可能な限り早期に開始する。予防内服の実施により、おそらくは100%感染阻止が可能。(高橋)