臨床検査とは?新薬や治療法を開発する過程において人間(患者)を対象に有効性と安全性を科学的にしパベルのが「臨床検査」です。臨床試験には第1相:安全性の確認、第2相:有効性・安全性の確認、第3相:標準治療との比較による有効性・安全性の総合評価の3段階があります。現在、標準治療として確立されている薬剤や治療法もかつて臨床試験が行われ、有効性や安全性が認められたものです。臨床試験への参加は未来の患者さんに貢献することにもつながっています。
転移・再発を起こした大腸がんの化学療法の流れ:治療を始める前にCTなどで病状の評価をしてがん組織のRAS遺伝子検査後、治療法の選択して治療します。治療の効果の評価をして効果ありと判断した場合は今の治療を続行します。効果がいま一つ、副作用などで今の治療を続けることが難しい場合は治療法(レジメン)を変えることを検討します。
RAS(ラス)遺伝子検査とは?がん細胞が増えるメカニズムの一つとして、細胞の表面にある上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)の関与が知られています。このEGFRに上皮細胞増殖因子(EGF)が結合すると、EGFRが活性化し、細胞に対して「増えろ」という命令を出します。細胞内でこの命令を伝達する働きをするタンパク質の一つがRAS(KRAS、NRAS)です。セツキシマブやパニツムマブはEGFRに結合し、EGFRの活性化を抑えて、がん細胞の増殖を抑える働きをもつ「抗EGFR抗体薬」という薬です。ただし、RASの遺伝子に変異(異常)があるとがん細胞には「増えろ」という命令が常に出ている状態となり、EGFRの活性化を抑えても、どんどん増殖し続けてしまいます。つまり、RAS遺伝子に変異がある大腸がんでは.、抗EGFR抗体薬の効果が期待できません。
そのため、転移・再発を起こした大腸がんの治療を開始する前に、RAS遺伝子検査を行って変異がないかどうかを確認し、抗EGFR抗体薬の効果が期待できるかどうかを予測します。約50%の大腸がん患者さんのがん細胞で、RAS遺伝子に変異があることがわかっています。RAS遺伝子検査は、手術や内視鏡検査で採取したがん細胞を使って行います。患者さん1人に付き1回、健康保険が使え、費用は7500円(3割負担の場合)です。
転移・再発を起こした大腸がんの化学療法の治療方針の例
全身状態がよく、強力な治療の対象となる患者さん:例11次治療FOⅬFOⅩ+ベバシズマブ2次治療FOⅬFIRI+ベバシズマブまたはラムシルマブ3次治療セツキシマブまたはバニツムマブ(+イリノテカン)4次治療レゴラフェニブまたはTAS-102か2次治療FOⅬFIRI+セツキシマブまたはバニツムマブ3次治療レゴラフェニブまたはTAS-102例21次治療FOⅬFOⅩ+べバシズマブ2次治療FOⅬFOⅩ+べバシズマブ3次治療セツキシマブまたはパニツムマブ(+イリノテカン)4次治療レゴラフェニブまたはTASー102か2次治療FOⅬFOⅩ+セツキシマブまたはバニツムマブ3次治療レゴラフェニブまたはTAS-102例31次治療FOⅬFOⅩ+セツキシマブまたはバニツムマブ2次治療FOⅬFIRI+ベバシズマブまたはラムシルマブ3次治療レゴラフェニブまたはTAS-102例41次治療FOⅬFIRI+セツキシマブまたはバニツムマブ2次治療FOⅬFOⅩ+ベバシズマブ3次治療レゴラフェニブまたはTAS-102例5FOⅬFOⅩIRI(+ベバシズマブ)2次治療セツキシマブまたはバニツムマブ(+イリノテカン)3次治療レゴラフェニブまたはTAS-102例65FU+ⅬV、カベシタビン、UFT+ⅬV、S-1のいずれか+ベバシズマブまたはセツキシマブまたはバニツムマブ2次治療可能であれば例1~5のいずれかの治療へ移行
強力な治療が適さない患者さん:1次治療5FU+ⅬV、UFT+ⅬV、カベシタビン、S-1のいずれか+ベバシスマブまたはセツキシマブまたはバニツムマブ2次治療は可能であれば身体の状態に適したレジメンを考慮または対処療法。
セツキシマブ、バニツムマブは、RAS遺伝子に変異がない(野生型)患者さんのみが対象となります。FOⅬFOⅩ療法の代わりにⅭapeOⅩ療法やSOⅩ療法を、FOⅬFIRI療法の代わりにIRIS療法を用いることもあります。患者さんの状態によっては一部の薬を抜いて行う事もあります。(高橋)