帝京大学の公開講座に行きました(第8回)

帝京大学の公開講座に行きました(第8回)

関節リュウマチの診断について一番重要なのは、まずは痛む関節を見せてもらうことです。触って、柔らかく、温かく、腫れているでしょうか。どこが腫れているか、年齢はいくつかと確認することが最も重要です。しかし、血液検査もします。自分の免疫が暴れて自分自身を攻撃するものを自己免疫疾患といいます。が「抗体」という体の中のタンパクの成分があります。例えばインフルエンザワクチンを打つとインフルエンザに対する抗体ができます。そのように外敵として入ってきたものに対処する成分を抗体といいますが、関節リュウマチになると間違って自分自身の関節を攻撃する抗体(抗ⅭⅭP抗体、リュウマチ因子)が出来るので、血液検査をします。

また、尿の検査、画像の検査もします。場合によっては関節液も取って検査します。また、微熱が出て炎症が起きると、体の中で本当に炎症が起きているかどうか調べるため、血液検査でさらに血沈、ⅭRPといったタンパクの検査もします。このような検査は診断基準に使います。

アメリカのリュウマチ学会は1987年に診断基準を作りました。これはよくできていて、早期の診断は出来ませんが、その診断基準を申し上げます。①1時間以上、朝、手がこわばる。実は変形性関節症の方も、朝は手指がちょっとこわばるのですが、30分以上こわばることは非常にまれです。1時間以上こわばるとすれば、やはりそこには炎症性の病気があります。②関節が3か所以上、腫れている③手関節、第二関節や手指の付け根の関節が腫れている④右の関節と左の関節で同じ所が腫れている。例えば、左右の人差し指の第2関節が腫れている。⑤リウマトイド結節がある。例えば、肘の所に固い出っ張りがある状態です。⑥リウマトイド因子という血液検査が陽性になる⑦手のレントゲンでリュウマチらしい変化が出ている。このようなことがあるとリュウマチと診断しますが、手のレントゲンで骨が壊れているとなると、もう結構、進行している状態です。

それを何とか止めようと、2010年には診断基準が変わりました。その中では自己抗体が陽性であるとか、炎症反応、手首や手指の関節の腫れなどをスコア化し、なるべく早く診断しましょうということになっています。

関節リュウマチの治療はみんな同じではありません。患者さんそれぞれに目標があり、生活があるからです。

例えばある患者さんは、左手首がすごく腫れていました。よくよく聞くと実は三味線のお師匠さんで左手をものすごく使うので「左手首を何とかしてほしい。足はいいから左手を何とかしたい」という目標がありました。

もちろんそのように職業に関係しなくても「海外旅行をしたい。」といった患者さんの例もあります。その場合「ここは車椅子を使ってもいいけれども、ここからは歩かなければならない。そのためには、階段は何段昇れて、どれくらい歩かなければならない」のかと逆算して、治療のゴールを決めていきます。そのうえで、実際には関節の腫れや痛みを止めて進行を抑えることになります。

治療方法は、基礎療法、薬物療法、手術療法、リハビリテーションの4本柱が全てです。

基礎療法としては日常生活の注意点で「睡眠を良くとる」「ストレスを避ける」「体を冷やさない」「お酒とたばこをなるべくやめる」といったことです。また体が楽になるように、例えばキッチンなど「長い間立っているのがつらい方は座って調理できるようにしましょう」「買い物にはキャリアを使いましょう」。首が悪くなるので「うつむいて本は読まない」など実はこれらもとても重要なことです。それから食事や栄養に関しては、塩分、脂肪分は避け、基本的にはカルシウムが高くバランスの良い物を摂ることや、肥満にならないこと、たばこをやめることも必要です。(高橋)