肺がん疾患啓発キャンペーンの市民公開講座に行きました(第9回)

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分子標的治療とはどのような治療ですか? 分子標的治療は、がん細胞だけが持つがんの生存・増殖に関与する分子(遺伝子やタンパク)を阻害する分子標的薬を用いて行う薬物療法です。標的分子を持たない場合は効果が得られません。 従来の抗がん剤には、がん細胞だけでなく、正常細胞にダメージを与え、副作用を起こすという難点がありました。これに対して、がん細胞だけが持つがんの生存・増殖に関与する分子(遺伝子やタンパク)に狙いを定め、その働きを阻害することでがんの増殖を防ごうというコンセプトのもとに開発されたのが分子標的薬です。 非小細胞肺がんの非扁平上皮癌で、手術不能なⅢ期、あるいはⅣ期に使用できる分子標的薬として、血管内皮増殖因子(VEGF)に対する抗体薬のべバシズマブ、上皮成長因子受容体HER1(EGFR)の阻害剤であるゲフィニチブとエルロチニブ、及び未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害剤であるクリゾチニブの4製剤がこれまでに市販されています。 べバシズマブはプラチナ併用療法と併用で1~2次治療に用いられますが、EGFR阻害剤、AⅬK阻害剤はそれぞれEGFR遺伝子変異、AⅬK融合遺伝子がなければ効果は得られないため、投与前には遺伝子検査を行い、陽性例に対してのみ単独で1~2次治療に用いられています。遺伝子変異のある肺がんに対する、EGFR阻害剤、AⅬK阻害剤の効き目は高く、薬物療法の治療ステップの必ずどこかに用いることが原則とされ、比較的早い段階である1~2次治療で用いられることが一般的です。 いずれの分子標的薬も、従来の抗がん剤に比べ、正常細胞への影響が比較的少ないのですが、標的分子の違いにより特徴的な副作用があります。重大な副作用として、べバシズマブでは血栓塞栓症や消化管穿孔が、ゲフィニチブやエルロチニブでは急性肺障害や間質性肺炎が、クリゾチニブでは致死的な肺炎が現れることがあるので、いつもと違うことがあれば担当医にすぐに連絡することが大切です。 なお、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能および再発非小細胞肺がん治療薬としてEGFRを含む上皮成長因子受容体HER(ErbB)ファミリーを阻害するアファチニブが新しく承認されました。この薬剤は、EGFRのみ阻害する従来の薬剤とは異なり、HER2やHER4などのHERフアミリーも持続的に阻害する作用機序を持ち、その効果についても期待されている分子標的薬の一つです。(高橋)